カウントダウンが始まった

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知人に30代後半になる女性がいる。

彼女は20歳頃から友人との人間関係で悩みを抱え、引きこもりとなり、あと数年で40歳を迎えるというのに、ずっと無職のままでいる。

何度かアルバイトの面接に応募したりしたのだが、せっかく面接で受かったとしても、不安だ、怖いと言って自分から辞退してしまう。しかもその連絡も親から電話してもらったり・・。

周りが彼女を説得しても、本人が泣いてしまうので親も強く言えず。そんな状態がもう10年以上も続いていた。

彼女は学生時代、成績が悪く、国語や数学、英語などはとても苦手で、いつも点数は低かった。勉強だけでなく、体育もとても苦手だった。いわゆるその地域における最底辺の偏差値の普通高校をなんとか卒業できる程度だった。それ以外にも、日常生活を送るうえで色々と困難なことがあったらしい。

もしかすると、いわゆる「境界知能」なのかもしれない。いや、それ以外の脳の病気があるのかもしれない。でもそんなことは絶対に聞けない。彼女の自尊心をさらに傷つけてしまいそうだから。

周りは心配していた。いくら実家暮らしとはいえ、もし彼女の父親や母親が病気になり、働けない状態になったら、一体どうやって暮らしていくのか?そもそも自分で買い物、自炊、選択、役場の処理などできるのか?

そんな心配をよそに、彼女の引きこもり生活は続いた。

いや、きっと彼女も彼女の中で相当悩んでいるのだろう。精神科の病院通いのことも聞いている。投薬のことも聞いている。自分でもなんとかしないと、とはわかっているのだと思う。でも出来ない。苦しい。そんな葛藤の日々を送っているのかもしれない。

しかし親や他人から見れば、さぼっている、逃げている、言い訳ばかりしているように見えてしまうのだ。その気持ちが彼女への強い口調になり、さらに彼女を傷つける。

周りは彼女を傷つけよう、傷つけたいなんて思っていない。でもこのままだと彼女の生活や将来が心配なんだ。なんとか一人でも暮らしていける能力を身に着けて欲しい。せめてアルバイトくらいは・・そう思ってるのだと思う。

そして1年前、彼女の父親が死んだ。病死だった。

彼女の家庭を支える人は、彼女の母親だけになった。

カチッ・・

カウントダウンの始まった音がした。

幸いなことに、彼女の母親は体は健康だ。高齢ではあるが、まだ正社員として働けている。父親が亡くなったことによる保険もいくらかおりたかもしれない。しかしだからといって彼女がこのまま無職で居て良いという理由にはならない。

彼女の母親は体は健康であったが、常に悩んでいた。父親の病気のこと、子供が引きこもりのこと、そして自分自身の今後のこと。

その悩みは日々蓄積していき、いつしか健康な体よりも先に、心を壊してしまった。彼女の母親は精神的に不安定となり、正社員として働くことができなくなり、会社を辞め、不慣れなアルバイトとして働くこととなった。

カチッ・・

彼女の母親が病気で倒れた時、誰が彼女の母親を助けるのだろう。入院した時、誰が手続きをするのだろう。そして誰が彼女の生活を支えていくのだろう。

周りは腫れ物に触れるように、恐る恐る彼女に何度も伝えてきた。でも変わらなかった。いざとなれば生活保護という手もあるよ、みたいなアドバイスもしてきた。でもそれを彼女自身が選択し、手続きなどができるだろうか。近しい人に遠慮して相談せず、良い顔をして近寄る詐欺師に騙されやしないだろうか。変な宗教に勧誘され、実家も土地も奪われ、身ぐるみ剥がされ捨てられやしないだろうか。

彼女、いや彼女の母親もだが、彼女らが行き場を失い、途方に暮れ、八方塞がりになった挙げ句、最悪な結末になることだけは避けたい。

雑記
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